生活医学講話57

アレルギーの治し方(1)

大西 秀典(ストレスクリニック・おおにし内科 院長)

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 今回は花粉症、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎など、アレルギーについてお話ししましょう。
 
アレルギーとは
 まず、アレルギーという言葉はギリシャ語の「アロース=変化する」と「エルゴン=力、働き」の合成語です。すなわち、一度何かに触れると体の反応が変化するという意味です。そもそも免疫とは自分と他者を区別して、他者を排除する働きですが、アレルギーは排除の仕方が過剰で人間にとって不愉快な免疫反応を指します。
 
自然治癒力の仕組み
 人間の身体には病気になれば、これを治す、あるいは身体を健康に保つ精妙な仕組みが備わっています。これを自然治癒力、あるいはホメオスタシス(恒常性)・システムと言います(図1)。
 この仕組みの本態は、免疫系、内分泌系、自律神経系が中心神経系(脳)を中心としてお互いに密接なコミュニケーションを行いながら、動的バランス保つシステムです。免疫系を中心に見てみると、脳から自律神経系を介して胸腺と各リンパ組織に情報が送られる。これに対し、リンパ組織からはサイトカインというホルモンのような情報伝達物質が脳に送られます。一例を挙げれば、細菌とかウイルスが身体に侵入すると、リンパ組織よりインターロイキン1が産生されて脳の体温中枢に働きかける。これによって熱が出る。熱により細菌とかウイルスの活動が抑えられ、また、免疫系全体の活性が高められる。さらに、脳の睡眠中枢に働きかけて催眠をもたらす。これにより安静、体力温存を図るわけです。風邪を引いて熱が出ると眠くなるのはこういう仕組みなのです。一方、感染が起こると、内分泌系の副腎皮質よりコルチコステロイドが、副腎髄質からはカテコールアミンが分泌されて、リンパ組織に働きかけ、免疫系の活性化が起こります。また、睡眠中分泌が高まる成長ホルモンはリンパ組織に働きかけて免疫系を元気にする働きがあるのです。睡眠不足が続くと免疫力が低下するのはこのためです(図2)。
 
ヒトの免疫系
 ヒトの免疫系の成り立ちは図3に示す通りです。一次免疫器管と二次免疫器管からなり、骨髄で造られたリンパ球はT細胞、B細胞、NK細胞に別れ、T細胞は胸腺に入っていきます。B細胞とNK細胞はそのまま全身を巡り、あるいはリンパ組織に入っていきます。胸腺に入ったT細胞はここで成熟化と選別が行われ、合格して成熟したT細胞のみがここか出ることができるのです。従って軍隊に例えると、T細胞は士官学校(胸腺)を卒業したエリート将校で、B細胞は一般の兵隊、NK細胞は特殊部隊員と言うことが出来ます。
 二次免疫器管は肝臓、脾臓、及び全身のリンパ組織がこれに当たります。リンパ組織は外から異物が侵入するところに発達します。最も外から沢山の異物が常に入ってくる場所は小腸です。従って小腸に最大のリンパ器官があり、これを腸管リンパ組織と呼びます。
 生物の進化上、二次免疫器管の方が古く、一次免疫器管の方が新しいのですが、一次免疫器管に属する胸腺は16歳頃をピークに以後段々と大きさも働きも小さくなり、80歳頃には痕跡になってしまいます。これでは成人以後は免疫系は下り坂と言うことになりますが、実際はそうではありません。良くできたもので、癌、動脈硬化などの生活習慣病に関係する免疫系は二次免疫器管で、20歳頃に免疫センターは胸腺から腸管リンパ系に移るのです。すなわち司令部が後方の胸腺から前線の腸管リンパ系に移動するわけです。
 ここでちょっと憶えて頂きたいことがあります。それは、白血球のは大きく分けて顆粒球とリンパ球と単球に分かれ、このリンパ球と単球が狭い意味での免疫細胞です。リンパ球はT細胞、B細胞、NK細胞に分かれ、T細胞はさらに、ヘルパー(促進)T細胞、サプレッサー(抑制)T細胞、キラー(殺し屋)T細胞に分かれます。ヘルパーT細胞はさらに、1型(Th1)と2型(Th2)に分かれます。
 
免疫系の正常と異常
 まず、図4を見て下さい。免疫系の主な働きは、異物が体内に入ってくることを阻止したり排除したりすること、腫瘍細胞を排除すること、老化細胞・変性物質を除去することです。これらがうまく働かないと、アレルギー、感染の成立、癌の成長、自己免疫疾患、組織の老化が起こるわけです。
 この内アレルギーと炎症反応は主に新しい免疫系が担当し、腫瘍免疫とメンテナンスは古い免疫系が担います。
 
アレルギーの仕組み
 ではいよいよアレルギーの話です。花粉症を例に取ると(図5)、まず、花粉(抗原)が鼻の粘膜にくっつき、一部が粘膜から侵入。それを免疫細胞である抗原提示細胞がキャッチし、その情報を2型ヘルパーT細胞(Th2)に伝える。Th2は情報をB細胞に伝え、B細胞は花粉アレルギー抗体(IgE)を産生する。IgEはマスト細胞にくっつき、これでマスト細胞はスタンバイ状態(感作状態)。そこへ花粉が2度目に進入すると感作されたマスト細胞のIgEにくっつく。するとマスト細胞の顆粒放出スイッチがオンとなり、ヒスタミンなどの化学物質が放出される。これらの化学物質が、炎症を起こしたり(赤く腫れる)、血管透過性を高めて鼻水が出る。これにより、粘膜から花粉を洗い流すわけですが、効果より不快効果が上回り、閉口すると言うことになるのです。
 
1型・2型ヘルパーT細胞の関係
 Th2は上に述べたように、B細胞に働きかけてアレルギーを起こします。一方、Th1はキラーT細胞に働きか
けて、侵入した微生物とか癌細胞を排除する細胞性免疫を担います。Th1はTh2の働きを抑制し、逆にTh2はTh1の働きを抑制します(図6)。
 正常な人リンパ球を取り出して調べてみますと、Th1とTh2がうまくバランスしています(図7)。しかしながら、アレルギーの人を調べてみますと、Th2が断然優勢な状態です(図8)。
 
寄生虫感染が多いとアレルギーは少ない
 図9は日本における寄生虫症とアレルギー疾患の推移をグラフにしたものです。これを見ると、寄生虫症が激減すると共にアレルギー疾患が増えているのが一目瞭然です。実は結核の感染率も寄生虫と同じようなカーブを示します。
 すなわち、寄生虫とか結核に感染するとTh1が優勢となりTh2の働きを抑えるために、アレルギーになり難いのです。
 さらに最近の研究では、生後6か月以内に抗菌薬投与を受けた小児では7歳までにペット,ブタクサ,イネ科植物,ダニに対するアレルギーおよびアレルギー性喘息を発症するリスクが高くなることが分かり、これは抗菌剤投与により腸内細菌叢が変化しTh1とTh2のバランスがTh2優勢に傾くために起こると推測されています。さらに、腸管内に酵母がある程度ちゃんと棲んでいるとTh1とTh2はうまくバランスしていることも分かったのです。
 
天然酵母の臨床治験より
 天然酵母を花粉症のある人とない人に2ヶ月飲んで頂き、IgEの変化を比較すると、花粉症のないグループは
飲用前、飲用後で有意な変化はなかったのですが、花粉症のあるグループでは、飲用膳に比べ飲用後は有意にIgEが減少しました(図10)。
 一方、癌患者に天然酵母を2ヶ月飲んで頂き、リンパ球幼若試験の値を比較すると、飲用前に比べ飲用後は有意にそのスコアが上昇しました(図11)。
 IgEはTh2の活性を反映し、リンパ球幼若化反応はTh2の活性を反映しますので、天然酵母の飲用によりTh1の活性が賦活され、Th2の活性が抑制されたと結論出来ます。
 事実、天然酵母を続けて飲用して、花粉症が出なくなった人、喘息が治った人、アトピー性皮膚炎が軽なった人が沢山います。
(続く)

 

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